週刊シネママガジン今週のスタースティーブ・マーティン
スティーブ・マーティン
スティーブ・マーティン

Steve Martin


 小さい頃からショーに興味を持ち、ディズニーランドなどに通い詰める。69年にTVの脚本でエミー賞を受賞。音楽番組のホストを多く務め、「サタデー・ナイト・ライブ」で人気が出る。ロック映画「サージャント・ペッパー」(78)で映画デビューし、続いてロック・バンド The Who の音楽ドキュメンタリー「キッズ・アー・オールライト」(79)にも顔を出した。当時は音楽映画のゲストという形での出演でしかなかったが、やがて往年のミュージカルのパロディ「ペニーズ・フロム・ヘヴン」(82)と往年の犯罪映画のパロディ「四つ数えろ」(82)では、名作のフィルムを編集でつなげるという荒技で40年代のスターたちと共演して話題になり、本格的に映画界に進出した。
 「サタデー・ナイト・ライブ」出身の映画俳優としては、おそらくナンバー1のショーマンだと思う。自虐的なユーモアといい、ぐにゃっとゆがむ顔の表情といい、番組譲りのあの間の取り方といい、ただそこにいるだけで味のある人である。彼ほど安心して見られるコメディアンもそういないと思う。ビリー・クリスタルがもっぱら饒舌(じょうぜつ)をふるったスタンダップ・コメディばかり任されていることを思えば、スティーブ・マーティンの口数の少ない演技は見事というべきものがある。
 僕が最初に見たのはジョン・ヒューズ監督の「大災難P.T.A.」(87)だったが、これがかなり面白いロードムービーで、時にはしんみりしたシーンもあって、傑作だった。スティーブ・マーティンが踏んだり蹴ったりの災難にあいまくるハチャメチャな内容で、彼のリアクションがなんともいえず楽しかった。本人は大まじめの役なのだが、彼が不幸になるところがおかしいのである。
 次に見たのはジョン・ランディス監督の「サボテン・ブラザーズ」(86)。これも傑作だった。スティーブ・マーティンは冴えない西部劇の俳優役で、映画出演の依頼かと思ってメキシコにいったら、本当の悪党退治の依頼だったという話。チープな映画だけど、「サタデー・ナイト・ライブ」ではすっかりおなじみのチェビー・チェイス、マーティン・ショートとの3バカ・トリオぶりが最高におかしく、僕はこれでスティーブ・マーティンをすっかり好きになってしまった。彼はこの映画の脚本家としても名を連ねているが、つまりはストーリーメーカーとしても才能があるというわけである。そして彼自身の脚本を彼自身の製作主演で映画化した作品が「愛しのロクサーヌ」(87)だった。これは現代版シラノ・ド・ベルジュラックである。このころから90年代前半までは出演ラッシュであるが、中でも異色なのは「わが街」(91)だろう。彼にとっては珍しいクソ真面目な社会派ドラマである。高級車に乗っていることで、通り魔に撃たれてしまう敏腕プロデューサーの役だが、撃たれたショックで気絶し、口から泡を吹き、小便を垂れ流す様が凄まじかった。この人はこれからもこういうシリアスな演技をやっていくべきではないか。
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2005年1月23日