15歳で宝塚歌劇団に入団し、二十歳前半くらいから映画にも出演。「州崎パラダイス 赤信号」(56)で演技派女優として高く評価され、以後、現代劇から時代劇まで幅広く活躍。テレビの方でもすっかりお茶の間の人気者になった名女優である。
僕は新珠三千代の代表作を全部見たわけではないから、ここで偉そうに語る資格なんかないんだけど、でも僕が「人間の條件」(59)の1本だけでも新珠三千代の大ファンになったということだけはどうしても書きたかった。「人間の條件」に少しだけ出てくるけど、それでも新珠三千代は十分すぎるほど輝いていた。重々しいタッチで描かれる戦争悲劇の中で、新珠三千代の清純な美しさが残酷なまでに鮮烈な印象を残す。これは数多くの候補者を押しのけての出演だったらしい。この映画における新珠三千代はまさに「妻」の象徴だった。
「男はつらいよ」には30年代・40年代生まれのビッグスターがマドンナ役で出演したものだが、本格的にマドンナ像を決定づけたのは3作目に出た新珠三千代だろう。旅先で出会った女将さん。いかにも寅さんが一目惚れしそうな着物の似合うしっとりとした役を演じていた。新珠三千代は洋服も似合うけど、和服もまた格別似合う。ほんと、落ち着いた大人の香りがする女優だ。
その他の代表作に「こころ」(55)、「黒い画集・寒流」(61)、「かあちゃん結婚しろよ」(62)、「怪談」(64)、「女の中にいる他人」(66)、「社長」シリーズなどがある。DVDの検索
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