「シャロウ・グレイブ」(94)、「ピーター・グリーナウェイの枕草子」(95)など、デビュー当時から、割と珍しい作品に出ていたユアン・マクレガー。彼を一躍有名にした作品は「トレインスポッティング」(96)だ。びしょ濡れ坊主頭のガリガリ。いかにもラリってそうなポスターを見て拒否反応を示した客も多かったが、映画の方は無事に成功。90年代の「時計じかけのオレンジ」との評価も受け、90年代イギリス映画旋風の先鞭をつけた。僕はきっとこいつはゲイリー・オールドマン系の病んだ俳優になるのに違いないと思ったものである。「時計じかけ」のマルコム・マクダウェルは、反逆的なイメージを植え付けたことで、その後の役作りに苦労したように思えるが、ユアンも彼の二の舞を演じないかと、少なからずジンクスはあった。それだけに、その後の活躍ぶりには、僕は目を丸くした。
僕の予想とは逆方向に行ったユアンは、正直者の兄ちゃん役に本領を発揮。よくみるとすごくハンサム。健康的な白い歯を見せてニカッと笑うところは、ユアンの強力な武器である。日本では一時期英会話の広告でこのユアン・スマイルが使われたが、これがちっともイヤミったらしくなかった。ユアンの表情は、都会的でありながら田舎的な乳臭さがするから好感がもてる。
ハリウッド進出し、「スター・ウォーズ」シリーズのオビ・ワン役を射止めてからは男性ファンも急増。たしかにアレック・ギネスの面影があったが、「エピソード2」では髭をはやし、貫禄もついた。こうなると「トレインスポッティング」のあの坊主頭はどこへいったやら。「恋は邪魔者」(03)のレトロ・ファッションほか、どんな衣装を着ても似合ってしまうこのナイス・ガイ。「ムーラン・ルージュ」(01)も「ビッグ・フィッシュ」(03)もユアン以外に考えられない。
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