いろいろなところで「演技派」と褒めそやされるジュリアンだが、遅咲きの彼女がどうしてここまで尊敬されるようになったか。答えは彼女が出た群像劇を見ればわかる。ご存じのように、群像劇には沢山の映画俳優が出演し、主人公といえる人物は登場しない。そうそうたる顔ぶれの中で、誰よりも観客の記憶に残った俳優こそ、真の演技者ではなかろうか。ジュリアン・ムーアは群像劇に出演することが多かった。別に群像劇を好きこのんで選んでいたわけではないが、ジュリアンが少ない場面でキラリと光る演技を見せる女優だと直感したアルトマンとアンダーソン監督の目が正しかったのだ。ジュリアンは群像劇の出演を足がかりにして、各地の映画賞・映画祭で注目される存在となっていく。助演女優賞はともすれば主演女優賞よりもノミネートされにくいとされるが、ジュリアンはしばしばノミネートの常連になった。それが幸いして、主役も張れる女優となり、「エデンより彼方に」(02)と「めぐりあう時間たち」(02)でその人気は確固たるものとなった。
もともと助演から始まったせいもあり、「逃亡者」(93)、「サイコ」(98)、「ビッグ・リボウスキ」(98)など、意外といろいろな作品で顔を見ることができる。ジェームズ・アイヴォリー、ニール・ジョーダン、ラッセ・ハルストレムら、業界を代表するアート系の監督たちの作品に出演したことも見逃せないが、「ロストワールド」(97)や「ハンニバル」(01)など、人気シリーズの続編の主役に抜擢される器量も大いに評価したい。
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