ブロックバスター映画とは縁がないが、ルトガー・ハウアーが出演した作品はマニアックな映画ファンのハートをつかんでいる。彼を一躍有名にしたのは「ブレードランナー」(82)。まっ金きん頭の人造人間を冷たい表情で演じ、原作者ディックから"イメージ通り"と評された。公開当時は「ブレードランナー」の人気は今ひとつだったが、ルトガーの演技と世界観は後々に評価され、同作はビデオ販売で大いに話題となる。
濃厚な顔つきは、中世の騎士のイメージにもマッチし、「レディホーク」(85)では13世紀に魔法で狼の姿に変えられた騎士を演じ、高く評価された。
一番の代表作はベネチア映画祭で金獅子賞を獲得した「聖なる酔っぱらいの伝説」(88)だろう。ルトガー扮するはフランスのとある飲んだくれ。彼が体験する不思議な一日を、独特なカメラ効果で、物静かに描いた異色作で、ルトガーの一人芝居が作品の核となっている。ミニシアターでじっくり再鑑賞したい秀作である。
この他に、サム・ペキンパーの遺作となったスパイ映画「バイオレント・サタデー」(83)、近未来SF脱獄映画「ウェドロック」(91)、同じく脱獄もの「処刑脱獄」(94)に出演。ふつう目の映画よりは、変わり目の映画の方がはるかに多い怪優である。顔が顔なので、メガネ姿もヒゲ姿もお似合い。案外お茶目な役にも味があったり。それにしてはハンサムな怪優である。
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