ロン・チャニー

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※怪奇映画とはホラー映画だけを指す言葉ではありません。ミステリー映画や夜の都会を描いた作品、推理サスペンスなども含みます。

ロン・チャニー  

 ボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシと並ぶ古典怪奇映画御三家のひとりとして知られているが、ロン・チャニーの場合、それだけでは片づけられないところがある。御三家は3人とも伝説的といっていい役者人生を送ったが、作品の質といい演技といい、メイクアップのクオリティといい、そしてプライベートの事情といい、ロン・チャニーに関しては人生そのものがドラマであった。こういった評価も「千の顔を持つ男」(57)という素晴らしい伝記映画が作られたお陰だろう。伝記の影響でロン・チャニーの株は急騰、怪奇映画どころか、喜劇系のチャップリン、活劇系のフェアバンクス、メロ系のバレンチノと並び、サイレント映画史における怪物系の最重要アクターのひとりに位置づけられるようになった。出演作の数は150本にものぼり、これは後の怪奇王クリストファー・リーの本数に及ばなくも、たった十数年の活動期間にこれだけ出たのは大したものである。

 彼の伝記映画を見てもらえばわかるが、彼の家族はみんな口がきけず、耳も不自由だった。そのことが彼を一生苦しめることになるのだが、それを紛らわすべくチャニーは怪奇映画に出つづける。毎回毎回地肌が隠れて見えなくなるほどの凝ったゴテゴテのメイクアップで出演し、同じ顔では二度と登場しないチャニーの作品は一種のカルトブランドのような人気が出てくる。そうして「ミラクルマン」(19)、「ノートルダムのせむし男」(23)、「オペラ座の怪人」(25)などの傑作が生みだされていくのだが、そのメイクはグロテスク極まりなく、今見ても怖いほどだ。80年代のスプラッター映画の特撮をも凌駕するチャニーのメイクの秘密は、チャニーの内面的な演技の力なのかもしれない。チャニーのメイクは人を怖がらせようと意気込んで作りこまれたものではなく、内側から何かを言わんとしているものである。両親が障害者だったため、言葉ではなく、体からにじみ出る霊気で相手に意思を伝達させたその才能が映画の中に役立たれている。

 

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