■男気を除くその他の要素は一切排除

 特撮がどうのこうのというより、ドラマの見せ方に感心させられる。主人公4人の性格はあまりにも面白い。だいたいクソじじいたちがNASAの連中に「俺たちを宇宙へ行かせろ」と言うところから唐突すぎで無茶苦茶である。頑固さも度が過ぎており、彼らの中に残っているものは男の意気込みしかない。だからこそ、この映画はわかりやすく、美しいものとなった。

 

■対比的なシーンの重複が感動を与える

 この映画には対比的なシーンがいくつもちりばめられてある。似ている2つのシーンを微妙に対比させることで、感動を倍増させようという手である。
 比較する前のシーンと後のシーンは、間が離されており、観客がちょうど前のシーンを忘れた頃に、後のシーンが出てくる。観客は後のシーンを見た瞬間、前のシーンを思い出して、前後のシーンを対比させて感動するのである。「あちらからの差し入れです」「確率は40%」「合図はワンだ」「そろそろ鼻面を下げるとするか」など、似たような台詞が何度も出てくるのはそのためである。台詞は軽くサッと喋る程度だが、後のシーンではその腹の中に何か深い想いがこもっていることが前のシーンとの対比でわかる。
 前のシーンだけでも絵的には充分悪くないのだが、それを後のシーンと重複させることで、倍の効果が発揮されるのである。中で、とりわけ優れた対比はオープニングとエンディングである。最初と最後両方で、誰もが知ってるシナトラの曲を使っており、それが観客の記憶を刺激してドラマ性を高めさせるのである。
 つまり本作は観客の想像力に頼ることでドラマが成立している娯楽なのである。

2000年/ワーナーブラザーズ映画

<製作・監督・出演>
クリント・イーストウッド

<出演>
トミー・リー・ジョーンズ
ドナルド・サザーランド
ジェームズ・ガーナー
ジェームズ・クロムウェル

(第99号「レビュー」掲載)

 

 この間、掲示板で「ハーバード大学を卒業した俳優を教えてください」というクエスチョンがあったけど、いました。トミーさん、しっかりハーバード出てます。かしこいねえ。といっても、いい大学出てるからって、いい役者かどうかとは関係ないんだけどね。もちろんトミーさんはいい役者ですけど。

 この人は、有名になった頃は、もういぶし銀みたいな感じになってた。ま、昔も「歌え!ロレッタ・愛のために」(80)とかあったけど、やっぱりこの人は90年代からだね。オリバー・ストーン監督作品もいいけど、「メン・イン・ブラック」(97)のサングラス・スタイルも決まってます。

 僕がすごいと思ったのは、「逃亡者」(93)でアカデミー助演男優賞を取ったとき、授賞式にハゲ頭で登場したこと。ほんとうのハゲかと思っちゃいましたよ。次の映画の役作りのために髪をそり落としていたというんだけど、世界が注目する晴れ舞台にまさかハゲで登場するとは、こやつはただものじゃないなと思った。

 「ボルケーノ」(97)、まじでいいです。ふつうなら若いスターが主役するべき映画なのに、トミーさんのようなおっさんが主演してるとこに味がある。

 
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