南極日誌
★★★★1/2
(2005年韓国)
 


 南極の到達不能点(どの海岸線からも最も遠い地点にある一点)を目指す6人の探検隊が、極限状態に追いつめられて、しだいに気が狂っていく様をホラー映画のタッチで不気味にミステリアスに描いた映画。
 これは、探検隊がいかにも何かありそうな日誌を発見してから、一気に怖くなっていくが、この日誌を子供だましと捉えるか、それとも「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくる指輪のようなものとして捉えるかで、この映画の評価は分かれるだろう。
 僕も今まで色々な映画を見てきたが、これほど背筋が凍りつくような思いをしたのは初めてだ。一人で映画を見ることがこれほどにも怖かったとは。なぜ舞台に南極を選んだのかもよくわかる。南極は、白くて綺麗な自然というイメージがあるが、この映画の中の南極は、そのような美しいものではない。白い雪、雲ひとつない青い空、それはまるで吸い込まれていきそうなくらい、冷たくて、恐ろしい映像に見える。探検隊が幻覚を見るところなどは、ジャパニーズ・ホラーで有名な川井憲次の音楽も手伝って、深く意味を考えさせるまでもなく、純粋に本能に訴える怖さがある。本能的ゆえに、それがどう怖いのか、説明するのは難しいが、とにかくその得も知れぬ恐怖感に僕は体がぶるぶる震えてしまった。子供の頃は夜が怖かったが、それと同じような怖さと不安感がこの映画にはあった。

ランド・オブ・ザ・デッド
★★★★
(2005年アメリカ)
 


 時期的にどうしても「ドーン・オブ・ザ・デッド」と比較してしまうが、「ランド・オブ・ザ・デッド」はきちんとした「ゾンビ」シリーズの続編とあって、全体的に本家らしさが際だった内容に見えた。「ドーン・・・」も僕の大好きな映画だが、あれは「ゾンビ」シリーズに属さない独立した新作として作られていた。2作の大きな違いはゾンビが走るか走らないか、人肉を食うか食わないかである。「ドーン・・・」はゾンビが走るところが恐怖の見せ場であったが、本家「ランド・・・」のゾンビはのそのそと歩き、そばにいても気配がないところに怖さがある。真っ暗の部屋、誰もいないかと思いきや、懐中電灯で照らしてみればゾンビがうようよ。ちょっとよそ見をしていたら、避ける暇もなく噛まれているし、少しでも噛まれればそこで人生は終わり。そんな緊張感が、さすがは本家ゾンビらしいところ。「ドーン・・・」でゾンビの定義を一新された直後に、65歳となるベテラン、ジョージ・A・ロメロはゾンビのお手本を叩きつけ、ひたすらに人肉をむさぼり食う映像を見せつけたところに、生みの親としてのかたくななコダワリを見ることができる。ゾンビのうちの一人がシーザー的な指導者となるところだけはゾンビ・シリーズの格調を落とすようで僕はあまり好きではないが、ともかくロメロがそれまでのシリーズを通して、人間とゾンビが共生する世界観を築き上げた功績はいまだに大きく、「ランド・・・」でもその世界観はラストシーンまで一貫して守り抜かれており、僕は大変気に入った。

2005年9月5日