気が付けば僕は映画を見ながら体を上下に揺らしてノリに乗っていた。少なくとも僕を「動かした」わけで、この映画は「人を動かす映画」ということになる。これはすごいことである。
監督はこの作品で「ロック論」をやっている。「ロックとは何か」「ロックの歴史」「ロックという音楽の定義」など、その監督自身のこだわりを、雑誌のエッセイなどではなく、映画の中で大いに語りまくっている。先に来ているのが「ロック論」で、ドラマは後から来たもののようにも思えるが、ちゃんとドラマとしても成立しているから面白い。監督のロック論は、劇中歌われるヘビメタやパンクだけでなく、すべてのロック音楽に共通する本質をついている。頭に超が付くほどのロックマニアである僕自身も日頃から言いたかったことを、監督はこれ一本で形にして見せつけてくれた。この作品からみなぎる監督の趣味とこだわりは、はちきれんばかりのパワーを持ち、僕はヅカーンと脳天をかちわられた思いである。趣味こそ人生最大の楽しみ。そのとおり! 趣味に没頭する人間は生き生きとしてかっこいい! この作品に描かれているのはそこである。
この映画が、ロックをよくわからない人にも受けがいいのは、純粋に主人公のリーダーシップに感動したからだろう。ジャック・ブラックは今年一番の名役者である。心から「君だったら絶対にできるよ」といって相手を勇気づけるその真に迫った演技は「ライムライト」のチャップリン以来の感動間違いなしである。演奏の中にメンバーそれぞれのソロ・パートをいれる気配り。命令はせず、相手のやる気を呼び起こさせる器量。この人になら付いていきたいと思わせるリーダーである。DVD
|