週刊シネママガジン作品紹介レビューロード・オブ・ザ・リング 王の帰還


 ピーター・ジャクソンの演出には、必要以上に気取ったところがあり、僕はそのクサさに幾分か不満を抱いていたのだが、クライマックスを見て、不満のすべてを忘れた。
 クサさの最たる要素は、登場人物の「使命感」の描き方である。登場人物たちは、あたえられた使命をまっとうするため、自分の命を犠牲にしてでも戦わなければならない。その描き方はあまりにもクサいのだが、ここまで度が強いと、見ていてさすがに心揺さぶられるものがあった。最期の望みを託しての突撃シーンは、勇者達がめいっぱい雄叫びをあげながら、いっせいに駆け出し、持てる力のすべてを出して敵陣へと猛突進していく。けたたましい轟音が劇場内を覆い尽くす、すさまじい気迫と興奮に満ちたシークェンスだが、それは同時に誠心を具現した美しい映像でもあり、「やらねばならぬ男達のロマン」を、ことに美化して見せつけている。クサくともかっこよく、涙さえ誘うシークェンスである。ジャクソンは恥じることなく、こういったクサい演出を次から次へと畳みかけ、その体裁を最後という最後まで貫き通してしまった。大胆きわまるこの一直線の映画構成は、うまうまと観賞者を乗せてしまうだけの途方もない「威勢」に裏打ちされ、まさしく「大団円」と呼ぶにふさわしい一大ページェントになっている。狙っていてもなかなかできるものではないが、この映画ではそれが見事に決まっている。

 3作あわせて、このスペクタクルをぜひ「体験」して欲しい。僕はこんな素敵な映像体験ができただけでも、ジャクソンに感謝の気持ちでいっぱいである。もちろん★は5つ進呈する。
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今週のスターNo.251 ショーン・アスティン


Sean Astin (1971-)

「ロード・オブ・ザ・リング」(01-03)では友達を守るひたむきな姿が感動を呼び、一番おいしい役を持っていった感のあるアスティン。実はあの「グーニーズ」(85)では主役のマイキーを演じていた子役畑の俳優なのだ。母親があの名女優パティ・デュークとあって、子役だけでは終わらず、成長しても地道に活動を続けていたが、青春時代は「メンフィス・ベル」(90)、「トイ・ソルジャー」(91)、「原始のマン」(92)に出たくらい。「ルディ 涙のウイニング・ラン」(93)というお涙頂戴系の主演映画はあったが、一般的にその名が知られるようになるのは「ロード〜」からである。「ロード〜」の役作りには少なからず「ルディ」の影響が感じられる。監督業にも興味があり、今後の動向が気になる感動マンである。
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2004年2月22日