通常バージョンと、IMAXバージョンの二種類があるが、IMAXバージョンを見ることが大前提である。IMAXでは必然的に日本語吹替になるが、たとえ原音を犠牲にしてでも、見ておく値打ちがある。
登場人物の毛穴の脂汚れまでもくっきりと映し出すその巨大画面では、遠近法の効果も生きてくる。観賞者の視界は映像に埋め尽くされ、画面端に写った登場人物を見るためには、首を左右に動かさなければならない。かつてこれほど首を使う映画があったろうか。それはまるでバーチャル・リアリティを体感しているようである。また作品自体もバーチャル・リアリティをテーマにした物語であるため、登場人物が仮想世界に入ったとき、観賞者の方もつられてその世界へ入ったように錯覚してしまう。これはすさまじく衝撃的な体験である。
この作品における仮想世界とは、我々の住んでいる世界に等しいが、それをいかにも「作り込まれた世界」ぽく演出しているところが圧巻である。仮想世界は広大であるが、それなのに閉ざされた印象を与えているのである。現実世界への出口は一カ所しかないこと、どこに行こうともすぐ側に敵が潜んでいることが、さらにその印象を強めていく。大画面に広がる壮大な空間の視覚的な刺激と、閉じこめられているような精神的圧迫という対極するこの二つの異様なフィーリング。これがただものではない。
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