平成狸合戦ぽんぽこ
★★★★★
  高畑勲は偉大すぎる。投げ出しているのではないかと思われそうな内容だが、宮崎駿のナウシカやラピュタとはまるで違った面白さがある。将来、おそらく日本映画としてはもっともアングラな作品のひとつとして記憶されることになるだろう。まるっきしスタイルを変えて、それでいて失敗しなかった映画作家は世界でも数えきれるほどしかいないが、高畑勲もその一人に加えていいだろう。とにかく「思い切ったぞ」という感じである。狸が変化(へんげ)して二足歩行し、キンタマを巨大化させて人間様をぺしゃんこにする思いもよらぬ発想にはまいりました。ストーリーもいいが、視覚の刺激はもっと強く、次々とスムーズに変化していくバラエティ豊かな映像のイマジネーションにまたびっくり。
T-Rex
★★★★1/2
 

本作の醍醐味はそのシュールさにあるため、ストーリーのしょぼさは気にならない。とにかく観客を不思議の国へといざなうことが目的らしく、それはタイムトラベル・バーチャルツアーご招待映画みたいな趣向である。CGによる恐竜の3D巨大スクリーンの迫力は肌の質感からしてただごとではなく、あえて恐竜を静止させて立体映像をじっくりと観察できるようになっている。CGで作った映像だからこそ、実写にはできない工夫が加えられ、奥行きのある立体映像に仕上がっている。エイゼンシュタイン映画に出てくるような濃くのある顔つきのヒロインのアップ映像も表現しがたい驚きがある。3Dによるディゾルブやスローモーション、さらには遠景と近景の頻繁なピント移動などもあり、目の回路が錯乱してくるようで、もう麻薬的な内容である。

BROTHER
★★★★
 

僕個人的には、たけし映画では一番のお気に入り。なぜって、よくまとまっているからである。本作には独創性はない。しかし以前の作品に見られた奔放な遊びは洗い流され、スタイルだけがしっかりと残されている。来るところまで来たたけしのプレーン映画である。演出的な自由度には欠くが、たけし流の時間カットは更に洗練され、見せ方もじっくりと練られているために2時間の映画とは思えない濃厚なボリュームである。ヤクザ映画なのに派手なアクションシーンがなく、見せ方はいたって地味だが、それが逆に血なまぐさく、静かな空間にけたたましく響きわたる何発もの銃声が、ときとして美しくもあり、快感でさえある。銃口からたちのぼる煙にゆっくりと浸る映画である。

サンタVSスノーマン
★★★
 

クリスマスシーズンに合わせたお子様向きの映画のはずだが、あけてみるとサンタと雪だるまが戦争を繰り広げるというとんだ内容だった。前半の静かな氷の世界の雰囲気はアイマックスの3Dにピッタリとマッチしていたのだが、ストーリーがごちゃごちゃと忙しくなってくると、その奥行き感も意味をなさず、幾分か興醒め。主人公のスノーマンは決して喋らないところがロマンチックだが、後半から突如しっちゃかめっちゃかなギャグ映画になり、ムード破壊である。ただし戦争のシーンは「スター・ウォーズ帝国の逆襲」を巨大スクリーンで見た気にさせられ、違う意味で嬉しい。

 

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第117号掲載