モンスターズ・インク
★★★★
 

ピクサー恐るべし。おばけたちが主人公という設定だけでヤラレタ気分。おばけの世界と人間の世界をつなぐのがドアからというのも藤子不二雄みたいに夢があって好きである。ストーリーもきちんとしてるし、見せ場も考慮してあるし、派手なアクションシーンもあるし、ギャグも全部笑えるし、キャラクターもみんな可愛らしいし、映像も綺麗。おまけに最後には泣けるし、もう欠点が何も見つからないですな。ワンシーンワンシーンが悔しいほど演出がウマイっす。カメレオンみたいに消えることができるモンスターのあの動き、表情、登場のタイミングがまた見事。CGの技術力だけでも驚くところが多く、「CGを見る」という目的でも試してみる価値はある。いや、まいりました。今年一番のオススメです。

バイオハザード
★★★★
 

こういうホラー映画を待っていた。僕みたいなゲーマーにしてみればゴキゲンの映画である。これも言ってみればある種の「幽霊館」系のホラーである。ある会社の建物内でウィルスが漏れ、そこの会社にいた人が皆アンデッドになって調査員たちに襲いかかる。建物にはからくりがいっぱい。このハイテク系の建物の造形の雰囲気と、アンデッドたちが襲いかかる光景の格調美。ラストシーンはまさしく終焉で、ほれぼれした。
気に入らない点は、ミラ・ジョボビッチが回し蹴りするところ。あれではうるさいアクション映画と同じで品位が落ちる。ゲーム版バイオハザードの良さは「静寂の中に響くハンドガンの音」にあるのだが、この映画にはその音が欠けている気もする。

スパイダーマン
★★★★
 

いい意味で正統派映画。映画製作の基本の基本。ここまでくると気持ちがいい。不満をたれた観客たちは、これ以上何を求めようというのか? こういう設定の映画に複雑なひねりなどなくてもいいではないか。
いじめられっこの学生がスーパーヒーローになるという設定はオイシすぎる。ものの動きがスローモーションに見えるというのも面白いし、とにかくこいつは頼もしい奴である。スパイダーマンが登場するだけでも「待ってました」「やれーやれー」と嬉しくなる。スパイダーマンの目からのポイント・オブ・ビューは、Gを感じる物凄い臨場感。ワケアリであるところにもヒロイズムがある。

ノイズ
★★★★
 

この映画には悪い評判しか聞いたことがなかったので、どれほどひどい映画かと興味があったが、本当は何も考えずに見ればすごく引き込まれるホラー映画だったのである。僕も久しぶりに怖かった。最近の傾向とは裏腹に、50年も前の古い手で観客を驚かそうとしているところに美学がある。
この映画があまり受けなかった理由は、僕が思うに、宣伝の時点でやたらと宇宙のイメージを出し過ぎたからではないだろうか。あれでは正常な人間なら特撮を使ったSF映画を想像してしまうだろう。しかし実際これは暗い映画である。この暗さが良いのに、誇張した告知が別の層の観客たちを呼び寄せてしまい、悪い評判だけが広がっていったのではないか。もったいないことである。
それにしても、シャーリーズ・セロンがいい。こんなにも美しい女優がいたなんて! 恐怖映画には美人は付き物ですな。

エボリューション
★★★1/2
  地球外の未知の単細胞生物が地球に落ちて、どんどん進化していくという話。アホらしい映画だけど、こういうB級テイストの映画は僕は大好きである。なんといっても進化の度合いが甚だしくて面白い。未知の生物は、たった1時間にして地球時間の1億年分の進化を遂げる。単細胞生物から、多細胞の微生物になって、次はミミズになる。ミミズサイズになっても分裂で仲間を増やしていくところがひきつけられる。こうも進化が速いと、この先どうなっていくんだ?という興味がわいてくる。ついには恐竜、霊長類まで進化。このままでは地球は奴らに侵略されてしまうといういつも通りの筋書きになるが、敵が強大になればなるほど、盛り上がってくるというもの。あくまでキャラクターたちが冗談しか言わないところもよろし。この感覚は「ゴーストバスターズ」と同じですな。後から知ったけど、同じ監督だったんすね。ライトマン監督だから、こんなにアホらしい内容でも華麗にさばけたってわけか。しかし独自性がまるでないのは弱みである。
スター・ウォーズ
エピソード2
クローンの攻撃

★★★1/2
 

エピソード1にも言えたことだが、新シリーズで指摘すべきところは、「余計に動かしすぎ」「余計に加えすぎ」「余計に見せすぎ」ということ。とにかく余計な要素が多い。CGIを否定するわけではないが、着ぐるみの方がまだ親しみを感じる。ルーカスの描くデジタルキャラクターは、ひどく動きすぎる。中に人間が入っていればあんなには動かないだろうが、あれではまるでディズニーのアニメである。ユアン・マクレガーは人間だが、共演者はカートゥーンである。シリアスで壮大なスペースオペラに、ふざけた安っぽいカートゥーンがマッチするはずがない。しかも余計にCGIを加えすぎているために、カートゥーンの情報量が多すぎて、アニメが実写ドラマを飲み込んでいる。旧三部作で格調高いSF映画であった同シリーズは、新編に入って、もはやカートゥーンと化してしまった。小惑星圏内での攻防戦の迫力は確かにすさまじいが、あれもどうしてもアニメとして見てしまうのである。ヨーダは本当にかっこいい。しかしそれはハリソン・フォードのようなかっこよさではなく、スーパーマンのようなかっこよさでしかない。

アイアン・ジャイアント
★★★1/2
  面白いとか面白くないとかいうより、まあこの雰囲気を楽しんでくれよ。少年がいて、ロボットがいて、二人の友情がそこにある。特別工夫もない普通にアメリカンテイストのアニメなんだけど、あら不思議、登場人物みんなになぜか愛着を感じてしまう。ロボットのデザインは全然かっこよくないのに、あのでかさがもう可愛くて可愛くて。あれが人間と同じ大きさか、人間よりも小さかったら、あそこまで可愛くはなかっただろう。あのでかさが不器用でいいのだ。ロボットが少年と一緒に遊んでいる光景などは実に微笑ましい。アメリカ映画が最近忘れている温かさがこの映画には詰まっている。
ブレイド
★★★1/2
  僕はすごく単純な男なので、こういう映画には単純に熱中してしまう。ハーフヴァンパイアが剣をふりまわしながら、ばったばったと吸血鬼どもをやっつけて、最後にかっこいいポーズを決める。ただそれだけでも僕は満足させてもらった。ハリウッド映画というものは、殺陣回りだけでも観客をうならせる説得力があるから驚きである。この殺陣回りに、黒人、サングラス、ムチムチのアーマーという出で立ちが新たなヒーロー像を生み出す。ラストは期待通りどんでもない強敵とさしで勝負。まっぷたつに切れた胴体がまたくっつく大げささがかっこいい。小さい頃によくごっこ遊びで擦り傷をつくった男なら、癖になること間違いなし。映画はこうでなくちゃ。
アトランティス
失われた帝国

★★★
 

ディズニーもずいぶんと変わったものだ。「ふしぎの海のナディア」「天空の城ラピュタ」バリに、まるで日本のアニメのようなノリで作ってしまった。みんなが楽しみにしてるミュージカルの要素は一切無く、人間様が虫けらのように死んでいく内容である。それでいてキャラの顔の表情は昔のディズニーのままで、ワンシーンワンシーン、一発ギャグでおもしろおかしく見せているつもり。しかしこのギャグが何もかも外してしまっているのが痛い。このような日本アニメ風の内容を、ディズニーのキャラに演らせたところで両要素相殺が落ちである。しかし空中戦を描いた終盤だけは悪くないので、後味はよろしい。

タイムマシン
★★★
 

僕はだいぶ前に特撮映画の祖ジョージ・パルが作った「タイムマシン」を見て、ひどくがっかりしたことがあったが、今回の「タイムマシン」は原作者H・G・ウェルズの孫が作ったとあって、あのような失望はなかった。特撮も進化しており、僕が一番見たかった部分(時間が経過していく様子)もうまく描けていた。僕の記憶では、ジョージ・パル版はナレーションの補足でストーリーを説明していたと思うが、今回は映像だけで見ての通り説明ができている。「とにかく映像を目で見て感じてくれ」というこの姿勢は、今風でいいかもしれない。でなければ原作には勝てないだろうから。猛スピードで360度展望が変化していく壮観のロマンは、素直に享受して頂きたいものだ。
数あるタイムトリップものでも、本作は元祖となっている小説の映画化であるが、元祖にして何百万年後の未来に来ていたというのはロマンチックではないか。未来社会のSF映画なんてものは、せいぜい100年〜1000年後の未来が限度だが、本作は6億年後の未来まで見ることができる。まさに人間の想像を超えた未来である。他のSF映画と違い、人類の進化にまで手を加えた発想力たるや、H・G・ウェルズ様様である。それを映像化してみせようと頑張った今回の作品の勇気も買いたい。未来人の村の夜景のイメージ、あの衝撃は今も忘れられない。

スモール・ソルジャー
★★★
 

アッパレ。敵は相当小さいぞ。しかも表情がいつも同じ。この小ささと、変わらない表情が妙なおかしさ。こんな奴らに脅かされる様子が笑える。自転車にのっている青年を無表情で追いかける小さいおもちゃたちの光景は、もはやアバンギャルド映画のノリ。逃げる当人たちは大まじめ。ラジコンにのったスモール・ソルジャーの大群が家をせめてくる異様な光景の何たる迫力のなさ。それなのにこんな奴らにじわじわと追いつめられながら、家を攻め落とされていく様が痛いほどわかる。普通に面白い映画だが、あれだけの小さいおもちゃで、小さい爆発を幾度も見せて、ジオラマ的なスペクタクルに描いて見せた活動屋たちの心意気が、俺たちのハートを強く揺さぶる。アッパレである。

ビーン
★★★
 
 

Mr.ビーン、頭が悪くて、どうしょうもないワルで、しでかすことすべてがヤなことばかりなのに、どうしてかこいつは憎めない。この不思議な気持ちが、この映画のかなめ。モンティパイソンとかとは違い、ビーンの行動に毒を感じるのは、ビーン以外の人間がごくごく普通の人間だからだ。世界観全体がコメディ一色なのではなく、本作ではビーンたった一人だけがコメディで、他のみんなはシリアスなのである。シリアスの中に突如放り込まれるビーンの破天荒な行動が、危険なユーモアへと発展していき、ゲラゲラというよりは、ヒクヒク笑わせるこのセンスは圧巻である。この非道徳ぶりで、ラストにはなぜか気持ちよくさせられる。この感覚が不思議な魅力だ。
 

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第112号掲載