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この映画は個人的に大好きなので、「名作一本」のコーナーでいずれ紹介しようと思っていました。監督が勅使河原宏、主演が仲代達矢です。地味な映画なのですが、とても印象に残っています。 本作は、顔を失ってしまった中年男性の話です。男性は毎日顔中に包帯をまいて生活しています。この包帯姿がまた奇妙なんです。目元口元だけ隙間を開けているのですが、隙間からかすかに眼球が動いているのだけが見えるのです。 本作は会話中心の映画なのですが、この会話がまた面白いのです。主人公は包帯の隙間からボソボソと教訓じみたセリフを喋るのですが、話題が興味深くて、一言一言が皮肉たっぷりで、思わず唸ってしまいます。 監督は「砂の女」の勅使河原宏ですが、この人もまたおかしな監督でして、静かな空間の中に何か不気味さを漂わせます。おそらくムードを重視するタイプの監督なのでしょう。ひとつのシーンだけでも、俯瞰・アオリと様々なカメラアングルで撮影しており、その映像からは主人公の心理がえぐり出されていく感じがします。カメラと編集の妙ですね。武満徹の気色の悪いスコアがまたその雰囲気にすごくマッチしています。 後半からは、主人公が本物の皮膚そっくりの覆面を手に入れて、ますます面白くなっていきます。
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