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知っている人もいると思いますが、まず最初に言っておきますと、これは厳密には映画ではありません。ビデオゲームです。ではなぜここでゲームなんぞを紹介する必要があるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。単に自分がこのゲームを好きだから紹介しているのではありません。このゲームをひとつの「映像作品」として評価してもらいたかったのです。「Rez」はゲームそのものが映画といってもいいものでした。 コンセプトは「トランス」でした。ゲームでプレイヤーを陶酔させようというアイデアが見事形になりました。発売前から「サイバードラッグ」と銘打たれていたのですが、まんざら嘘ではありません。 システムは昔からのシューティング・ゲームと同じですが(敵機を撃墜しながら進んでいく)、とにかくこの感覚は不思議です。赤や黄色など、うっとりするような幻惑的な光の線だけで、独特な三次元空間(世界四大文明がモチーフになっています)が描かれており、主人公はその空間を高速飛行していきます。一見古っぽい映像かもしれませんが、これはかつてなかったものです。「2001年宇宙の旅」のスペースシャワーのシーケンスにも似てますが、プレイヤーの意思で360度好きな方向が見られるところが違います。ここが映画にはない危険なところです。バーチャルリアリティとはこのことでしょう。まるで本当にゲームの世界を浮遊している気になってきて、没頭しながら無意識のうちにトリップしてしまいます。 ケンイシイら大物ミュージシャンがサウンドを担当していることも話題になりました。敵機にロックオンし、攻撃するだけで、独特な電子音が生成されます。音はプレイヤーの行動次第で、常時リミックスされていきます。ボタンを適当に押すだけでも特徴のあるリズムに変換されます。それがコントローラからは振動になって直に伝わります。視覚・聴覚・触覚が同時に刺激されるのです。ヘッドホンをつけてプレイすると、もうたまりません。この感覚たるや、言葉で言い表しにくいものなので、実際に体験してもらうに尽きます。 「Rez」は「スーパーテレビ」でも紹介され、ロンドンの総合芸術賞「British Academy of Film and Television Arts」のグランプリにゲームとして唯一ノミネートされました。僕は21世紀のゲームは、「Rez」から始まったと考えています。そして21世紀の映画も、「Rez」がキーになると、確信しています。 「シネママガジン」はすごく勝手気ままなサイトなので、たまにこういう映画以外の分野のものを持ち出す機会も増えてくるかもしれません。でもこれも広い意味では映画の一種なんだと思って、無視しないで、どうかこれからもついてきてください。
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