アートアニメはからきしダメという人も、ぜひこの一本だけは一度見てもらいたい。原作は同名の絵本。そこに描かれている人間性と社会性は、実写映画化しても差し支えないほどよくできたものであったが、フレデリック・バックはあえてアニメーションにこだわり、セル画ではなく、色鉛筆を使って一枚一枚丹念に映像化していった。
ナレーションは、目をつぶっていると背景が浮かんでくるほど素晴らしく、言葉だけですべてを語っている。ならば映像は想像力の妨げになるのではないかと心配する人もいるかもしれないが、バックの温かい印象派タッチの映像は、ナレーションの味を損なうことなく、言葉と映像が見事に相乗効果を上げたのだった。僕も背景がぐるぐるとパンしていくダイナミックな映像には感動で震えた。この演出は、若いアニメーターたちを奮い立たせ、その後のアートアニメに数々の模倣を生むことになる。
絵の美しさと、ストーリーのメッセージ性ばかりが取りざたされる作品で、僕が最も感銘を受けた効果音については、あまり言及されることがなかったが、それでも僕は、この映画で一番評価すべきところは効果音だと思っている。
元来効果音というものは、それを意識させないように入れるものだが、この映画の効果音は、あえて観客に意識させるようになっている。それは、言うなれば音のクロースアップ。不必要な効果音は排除して、「絵になる効果音」だけを残し、観客に耳をすませるよう演出している。青年の足音、老人がどんぐりを植える音、小鳥の鳴き声、車のサイドブレーキ。効果音が、観客の想像力をかきたてる詩になっているのだ。
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