週刊シネママガジン作品紹介名作一本ファンタスティック・プラネット
ザ・バンド ラスト・ワルツ


 巨人ドラーグ族たちが支配する惑星イガムでは、人間どもはうるさい虫けら扱い。ペットとして可愛がられた人間もいるが、首輪をかけられて、そこには自由はない。ドラーグ族のとある家庭の娘に育てられた人間の子テールは、「2001年宇宙の旅」の人猿よろしく、いつしか高い知性を身につけ、人間たちを先導して、自由のためにドラーグ族に反逆する。

 セル画ではなく、切り紙のアニメーション映画。動きが独特で、奇抜なデザインのクリーチャーたちのアニメーションを見ているだけでも十分に楽しめる。特に人間どもの走る動きがおかしく、これは一見の価値ありだ。

 この映画は、人間どもをアリのように小さく描いているところがミソで、人間どもがうじゃうじゃ画面全体を駆け回るシーンは、アニメーションならではのユーモアに溢れている。CG技術が発達し、後に日清カップヌードルの「Hungry?」のCMが現れるまで、これは実写映画ではあり得ない演出だった。

 BGMにロック音楽を使っているのも二重丸。ディープ・パープルを思わせるエレキ・ギターのヘヴィなサウンドが、サイケデリックなムードを作り出し、ボッシュ風のシュールな映像とほどよくマッチしている。その感性は「イエロー・サブマリン」のそれとも似ている。そういえばディープ・パープルの3枚目のLPジャケット・デザインもボッシュの絵だった。

 人間どもがペットになるのは、「猿の惑星」にも似ているが、ドラーグ族を通して理性が、人間どもを通して本能の部分が描かれ、人間の行動がよく観察されたものである。ドラーグ族の一般家庭の会話の風景が、普段僕たちが見慣れた日常と酷似しているのが笑える。ドラーグ族にとって1年は人間でいう数十年にあたる。ドラーグ族が普通に生活している間に、人間どもは大量に子供を作り、寿命でバタバタと死んでいく。ドラーグ族の生活を見ていると、たしかに人間なんて地球上では虫と同じ動物であることに気づかされる。そういう哲学感も含めて、この映画はタダモノじゃない。
 

ファンタスティック・プラネット
▲人間ども駆逐作戦で使われた巨大絶滅兵器のひとつ。人間どもを容赦なくペシャンコにしていく。この惑星では人間どもはアリ同然である。


「ファンタスティック・プラネット」DVD
▲どこもレンタルしてなかったので、買おうか買うまいか3年間悩み続けて、ついに買ってしまいました。

1973年製作 フランス=チェコ
監督:ルネ・ラルー
作画:ロラン・トポール
原作:ステファン・ウル
音楽:アラン・ゴラゲール
カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞

2004年7月8日