2004年、「スパイダーマン2」が大ヒットした。荒唐無稽のアメコミのヒーローものが、どうしてあそこまで受けたのであろうか。おそらく、登場人物の人間性に焦点を当て、じっくりと心理を描いているからであろう。この脚本を書いたのは「普通の人々」、「ジュリア」で知られるアルヴィン・サージェントである。サージェントの深い心理描写が、サム・ライミの描くアクション・シーンをぐっと引き立てているのだ。
今回のフィルムロジックでは「スパイダーマン2」を見ながら、精神分析学における7つの無意識的な心の働きをもとにして、映画の中の心理描写の意味を読んでいきたいと思う。精神分析を作品に盛り込む監督といえば、少々ねちっこいピエロ・パオロ・パゾリーニなどのイタリア人監督に熟練者が多いが、こうした描写はアメリカ映画が長年不得手としてきたことである。しかし「スパイダーマン2」は、実にそれをさらりとやってのけているので、わかりやすく、研究しがいがある。
なお、精神分析の用語には難解なものが多く、書籍によって書かれている意味にも大きな違いがあるが、ここでは最近出版された「精神分析がおもしろいほどよくわかる本」(河出書房新社)を参考にしている。
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