映像配信、攻防激化へ

2003年3月5日(水)東京【朝日新聞−コラム】
人気歌手のライブ中継映像がパソコン上でスムーズに映し出された。配信はインターネットサービスのエキサイト(本社・東京)。会員向けの有料ライブで、通信速度が速いほど料金は高い。エキサイトはこれまでに約40のライブ生中継やその再送信を提供してきた。将来は売上高の1割強を動画配信で占める計画だ。
ソフトバンクグループはこの春に東京都内で「BBケーブルTV」を商用化する。通信設備を利用して放送サービスすることを認めた「電気通信役務利用放送法」に基づく、電話線を使った放送事業者の登録第1号だ。受信用の自社開発の機器を接続すれば、テレビ画面で見たい映画を1本数百円で見られる。米大手映画ユニバーサル・スタジオと契約して今年中に1千本以上の映画を提供する計画だ。
TBS、フジテレビは1月、双方の局の人気番組同士を同一のホームページにおさめた「Mu-Ha Web」をネット上で始めた。この2局にテレビ朝日を加えた3局が出資する「トレノーラ」は、地上波で流した番組をブロードバンドでネットに有料配信する事業を計画している。視聴率競争を繰り広げる他局同士がネットの世界では手を携えるのは、ブロードバンドの普及やデジタル化の進展をにらみ、双方向性を使ったビジネスの可能性を試す、放送業界の思惑が込められている。
通信ではテレビのように多数を対象にしたサービスは難しいとの指摘がある。また、テレビ業界の中には、番組制作能力を背景に「視聴者をネットに奪われる驚異は少なく、共存が可能」という見方もある。

これは、放送業界と通信(ネット)業界の攻防と協力を見詰めた興味深い記事である。テレビ放送が開始されて50年経つが、テクノロジーもかなり進歩したもので、いよいよビデオ・オン・デマンドが本格化してきた。テレビ局が一方的に番組を流す時代は古くなり、これからは視聴者側が見たい番組を選ぶ時代になる。最近ではパソコンでテレビ番組を見るのが常識になってきて、パソコンとテレビの境目がなくなりつつある。人気歌手のライブもテレビ映像となんら変わりない高画質でネットで鑑賞できるようになった。あまりにも急激で、複雑すぎるこの進歩。番組量は増えるばかりだが、国民の一日と番組視聴時間が増すわけではない。そうなると、もう昔のようなやり方では、メディア業界は破綻してしまう。今後、放送業界、通信業界、映画業界は我々にどのような動きを見せてくれるのだろうか。