|
暴動寸前!試写会ホールでの一騒動 |
それはとある映画の試写会の日に起きた事件である。予想以上に客が集まったせいで、何百人という客が映画を見られぬままホールから閉め出されたため、客とスタッフが激しい口論になったのである。
騒動が起きたいきさつを書こう。試写会の開場は18:00で、開演は18:30だった。18:00の時点から、すでに大勢の客が詰めかけて長蛇の列をつくっていた。ホールはビルの6階にあるが、客の列は階段づたいに1階へ続き、ビルの外にまで延びていた。 18:30。もう映画は始まっているはずなのに、まだ客は収容できておらず、列の流れは完全に停止。スタッフからは何のアナウンスもなかった。 18:40。ようやくスタッフが出て来て、「ホールは満席となりましたので、消防法により、これ以上の入場はできません」と説明。待っていた客の内の半分は諦めて帰ったが、残りの客は納得ができずにホール入り口から引き下がらなかった。配給会社に直接携帯で電話をかけてクレームを言う人も何人かいた。客たちは弧を描くようにスタッフを取り囲み、怒りをぶつけた。
女性客1「いったい試写状の葉書を何枚送ってるの!」 女性客2「高い交通費払ってわざわざ来たのに、これはないでしょ!」 ホールスタッフ「葉書にも書いてあるでしょ。満席の場合は入れないって。ここを読んでください」 女性客3「こんなに大勢の客が来てるんだから最初から全員入れないことくらいわかってるでしょ。もっと早く言えばいいのに、どうしてずっと待たせておくんですか! 開演して10分間たっても並んで待ってるのに、何も言わないなんて変じゃないですか!」 ホールスタッフ「荷物を座席に置く人がいるから、満席になるまでには時間がかかるんですよ」 女性客4「そういう態度とられると余計に腹が立つんですけど!」 男性客1「まあまあまあ。だからさ、あなたもただ謝ればそれで済む事じゃない。ね」
右からも左からも罵声をあびせられて、ホールスタッフはついに冷静さを失いプッツン。女性客3の前に来て「私もこの仕事に誇り持ってやってるんですから、仕事の文句は言わせませんよ」と説教する始末。人間ムキになるとプライドにかけても謝らないだろう。その時ちょうどビルの警備員が出てきてホールスタッフの代わりに謝ってくれたので、暴動には至らなかった。その後、配給会社側は後日映画のチケットを郵送する対応を取ることにした。
さて、この騒動を見て、どう思うだろうか。いったい誰が一番悪いのだろうか。試写状をバラまきすぎた配給会社か? 態度の悪かったホールスタッフか? 試写状をよく見てなかった客か? たしかに、それぞれの言い分はよくわかる。スタッフの苦労も痛いほどわかるし、楽しみを打ち砕かれた客の気持ちも僕にはよくわかる。 そもそも試写状というのは、来ない客のことも勘定にいれて、始めから多めに用意しておくものだから、配給会社にはそれほど非はないように思う。しかし、まさかあんなに客が集まるとは思ってなかったのだろう。読みの外しすぎにも限度はあろう。 僕個人的にはホールスタッフに一番落ち度があると思った。客にあの態度は非常識である。配給会社に代わって仕事をしてるわけだから、あんな態度ではホールの名だけでなく、配給会社の名までも汚してしまう。お客様は神様。最後に勝つのは絶対に客。客が怒ったら不服でもとにかく平謝りすべきだろう。誠意を見せれば、あそこまで激しい口論にはならなかったはずだ。そもそも客を10分も放置しておいた上に謝らなかった態度が何より客を怒らせたのだから。 とはいえ、客も全然悪くなかったわけではない。葉書には「満席の場合は入れません」と書かれてあるから、それは動かぬ証拠だ。 僕はこの出来事を翌日会社で2人の人に話して意見をきいてみた。興味深いことに、2人の意見はまるきり正反対だった。考え方は人それぞれってことだ。
【Aさんの意見】
【Bさんの意見】
2人とももっともな意見である。もしもAさんとBさんがお互いに頑固者だとしたら、2人が口論したら終わりのない戦いになるだろう。あなたはAさんとBさんどちらのタイプだろうか。 僕自身は「野次馬タイプ」ってところか。僕は試写会に満席で入れなかった経験はこれが初めてではなかったし、どうせ始めからタダのものだったので、映画が見られなかったことは気にしていなかった。それでも僕がその場にとどまったワケは、事の成り行きを最後まで見届けたい好奇心があったからだ。たいてい野次馬タイプってのは、一騒動の後、何か良い物がもらえるかもしれないと期待しているものである。ある意味、野次馬が一番世渡り上手か? お陰様で試写会を見るよりも貴重な体験ができました。 |
2006年1月19日 |