週刊シネママガジンDVD/ガイドムーンウォーカー

FILE7 ムーンウォーカー

 マイケル・ジャクソンがアルバム「バッド」の世界観を映像化したSFアドベンチャーPV巨編。
 これは大物ミュージシャンが作った(というか作らせた?)映画の中では間違いなく最高傑作と断言できる作品だ。人形アニメやメカバトルなど楽しさ満載。子供向けに作られていたので、僕もこれを中学くらいのときに興味を持ってテレビで見たのだが、民間放送の夜9時の時間帯なのに吹き替えでなくて字幕スーパーだったこと自体不思議な感じだったし、ストーリーよりも音楽が全体的に比重が高かったし、子供心にぶったまげた。今改めて見てみても、「ウエスト・サイド物語」など昔のミュージカルの影響を相当受けているようではあるが、ほとんどが唯一無二の内容。それでいて完璧な出来栄えだ。いまだにこれと同類の映画は作られてはいない。
 昔からマイケル・ジャクソンは、とくにレコードを持っていたわけではなかったが、ゲームの世界で知っていた。あのころからマイケルはゲームメーカーのセガと親交を深めていて、しばしばセガのゲームの中でカメオ的に顔を出すことが多かった。また、セガは「ムーンウォーカー」を家庭用と業務用あわせて二度もゲーム化している。2本ともゲームシステムは大幅に違っていたが、BGMに「スムーズ・クリミナル」が使われ、基本的には映画「ムーンウォーカー」の内容に忠実なアクションゲームだった。僕もゲームに相当熱中したので、お陰でマイケルのレコードを持ってなくとも彼の曲のことはよく知っていた。
 しかし、なんといってもマイケル様々。ただそこにマイケルがいるだけで十分と言わせるほどに、「ムーンウォーカー」の見所はそこに尽きる。前半はマイケル・ジャクソンのヒット曲のPVのダイジェスト集だが、「ビリー・ジーン」、「今夜はビート・イット」などのヒット曲のサビの部分だけを次々と見せられて、まずあらためてマイケルの実力に感服させられ、いっきに引き込まれる。マイケルの音楽は映像が伴うことで、その魔力は何十倍にもふくれあがる。マイケルは80年代はMTVの申し子と言われていたほどに、映像的に栄えるミュージシャンだった。こういうミュージシャンは、この50年のポピュラー音楽の歴史を見直してみても、マイケル・ジャクソンをおいて他にはいない。その実力を確認するための映画がこの「ムーンウォーカー」である。
 白いスーツをパリっとエレガントに着こなしたマイケルのダンスは、フレッド・アステアのそれを優に超えており、本当に信じられないほどにかっこいい。マイケルが、一番のりにのりまくっていたころの映像である。必見は「スムーズ・クリミナル」のシークエンス。ブロードウェイも目じゃない。まさにミュージカル史上屈指の名場面である。マイケルがバーに入るとそこはギャングだらけで、彼が投げたコインがジュークボックスに入り、いきなり沈黙をやぶってミュージック・スタート。まわりのギャング団も一緒に踊り出す。イントロからしびれるが、スタイリッシュなカメラワークといい、見たこともない振り付けといい、ビートのきいた音楽といい、そのすべてが奇跡的。これを見ると当時爆発的人気だったのも納得だ。
 しかし、劇中最後の曲がビートルズ・ナンバーというのが因縁を感じるが・・・。


「ムーンウォーカー」

ワーナー・ホーム・ビデオ
1500円
ディスク枚数 1枚

Disc1:本編のみ

映像再生品質:A
音声再生品質:A
特典充実度:-
コストパフォーマンス:A+

※劇中使用されている曲
1.Dirty Diana
2.Bad
3.Speed Demon
4.Leave Me Alone
5.Smooth Criminal
6.Come Together

2006年4月16日