FILE11 ガン・ホー

 今から10年ほど前、この映画がテレビで放送されてるのを見た。おそらくそれは、僕が生まれて初めて見た、海外映画の中に描かれている日本の姿だった。10年前初めてこれを見たとき、これはとんでもない映画だと思った。内容はほとんど覚えていなかったが、マイケル・キートンの「そんなに日本がすごいのなら、どうして戦争でアメリカに負けたんだ」というセリフだけは当時高校生の僕の脳裏にも強烈に焼き付いていた。
 この前DVDショップをぶらっと歩いていたら、この映画のDVDが安値で売ってあったものだから、つい衝動買いしてしまった。10年ぶりに見る映画は、さすがに新鮮である。これを買ったのには理由もあった。僕はこの文章を書いている一週間後にアメリカを旅する予定である。アメリカに行くからには、日本の恥さらしになりたくないので、まずは客観的に日本人がどのようみ見られているかを知る必要があったからだ。
 僕は『ガン・ホー』という何を意味するのか全くわからないタイトルの語呂の良さにもひかれていた。今日調べてみたら、この言葉は中国語で「共に働く」という意味だった。あちらの連中は中国と日本を同じにすることが多すぎる!
 10年前見たときも、この映画では日本をかなり誤解してる感じがしたが、10年を経た今見てもそこは変わっていない。まず日本企業の「更生プログラム」なるものの描写。まるでいじめ。こんなことをやる企業が日本にあるだろうか? ひどいもんだ。あまりにも日本をバカにしすぎている。
 アメリカ人が日本人の前で意見を出しても、日本人が誰も何もいわずに黙っているシーンもある。この映画では、日本人に決断力がなく、すぐに他人に相談したがるところが大げさに描かれていて、正直見ていて日本人が情けなくなってくる。だいたいこの映画の中の日本人はみんな無愛想すぎる。日本語のアクセントもメチャクチャ。前半部分はかなりイライラさせられて、見るのも嫌になるくらいだ。
 しかし、よくよく考えてみると、この映画では、アメリカ人も大げさに描かれていることに気づかされる。そしてアメリカ人もブサイクな役者が揃っているので、アメリカ人をひいきしているわけではないこともわかる。この映画では、日本人とアメリカ人、それぞれの悪いところが誇張して描かれている。アメリカ人は仕事中も自分のことしか考えていなかったり、アメリカ人はアメリカこそが史上最高の国だと信じて疑わない。そういううぬぼれぶりが、ちょっと痛々しくも見える。だからアメリカ人にとっても、この映画の前半パートは不快なものに見えるかもしれない。
 この監督がまさかあのロン・ハワードだったとは意外である。おそらくこれは彼にとってもっとも異様な作品となったであろう。しかしさすがは現代の巨匠。このようなとんでもない映画でも、最後にはじんと感動させるストーリーになっている。ラストでは、アメリカ人と日本人が団結し、それぞれの良さを認め合って、高めあって終わる。ラスト・シーンで、アメリカ人たちがラジオ体操をするシーンなどはなかなか壮観である。
 日本人は建前を大事にする国である。仕事だ仕事だといっても、日本人だって本音では会社へ身を捧げようと思っているはずがなく、実際は楽をしたいと思っている。サービス残業を好きでやる人なんているわけがない(だから本来ならば日本人とアメリカ人は会ってすぐに意気投合してもいいはずだが)。僕なんかは日本人よりもアメリカ人の方がよっぽどよく働く人種に見える。日本人が引っ込み思案だということは言い訳しようのない事実だから、そこをバカにされてもしょうがないが、本当は「会社なんかクソっくらえ」と思っている日本人の本音がこの映画にはちゃんと描かれていたので、なんとか救われる思いである。

ガン・ホー
「ガン・ホー」
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
1000円
ディスク枚数 1枚

画面サイズ:16:9スクイーズ
音声:英語5.1chサラウンド、日本語吹替ドルビーデジタルモノラル

Disc1:本編

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2006年8月6日