これは大林映画というべきか、角川映画というべきか。尾道が舞台だから大林映画になるのだろうが、角川春樹もこれにそうとう思い入れがあったはずだ。とにかく、80年代の流行のひとつだったのは間違いない。僕も昔「お湯をかける少女」なるパロディをCMか何かで見た記憶があるが(むしろ僕はお湯の方が本家だと思っていたくらいだ)、パロディのネタにされるほどハヤリだったのだろう。描かれていることのほとんどがハヤリの起爆剤となる。おそらくこの映画からラベンダーの香りも世間に認められたのではないか。
今見てみると、古くさいわけではないが、もろに時代を感じさせる映画になっている。というか、大林映画がそもそも時代を感じさせるべき映画としてもとから作っていたのかもしれない。僕は大林世代じゃないのでそこがわからないのが残念だが。「青春デンデケデケデケ」を見たときも思ったが、大林監督は古き良き時代のノスタルジイを映像に残すことにかけては日本一なんじゃないか。相手役の男の子2人はいかにも大林映画らしい普通の顔だし。女の子が赤いカーディガンに下駄なんて普通ありえないけど、そういう和の雰囲気が好きである。
原田知世は薬師丸ひろ子と人気を二分した角川スターだった。これが映画デビュー作だが、実はこれよりも前にテレビ版「セーラー服と機関銃」でデビューしていたらしい。テレビアイドルと映画アイドルは違うもんだと思ってたが、松田聖子風の髪型を見ていると、当時のアイドルはみんなこんな感じだったのかと想像してしまった。僕の世代となると、原田知世とくるとトーレ・ヨハンソンのイメージが先に来てしまう。なんでトーレ・ヨハンソンが原田知世と組むんだろうという意外な人選に首をかしげたのが記憶に焼き付いていながらも、声の高さがいつも変わらない透明感のある曲が多かったのはさすがトーレ・ヨハンソンだとうならせたものだ。そんなこんななので、今この映画を見てみると、まだ少女の知世ちゃんがほんとに初々しい。下手な芝居でも一生懸命やってるのが伝わってくるから愛くるしい。エンドクレジットではなぜか主題歌を歌っちゃってるし、最後のカメラ目線の笑顔なんて見ているこっちまで嬉しくなってくる。恋せよ乙女なんちって。
あまりにも切ない結末は、賛否別れると思うが、タイムスリップ映画としては、なかなかひねりのきいたアイデア映画だと思う。大林映画らしいところは、ストーリーをとにかくロマンティックに盛り上げようとあらゆるところでサービスしてくれてるところだ。これでもかこれでもかとロマンティックに見せ掛けようと小細工を使っている。セリフも特撮映画の最終回バリにやたらとクサイけれども、なんか許せてしまう。時をかけるとき、男の子がシルエットになって原田知世を抱き上げるシーンなど、ちょっとせこい演出にも見えてしまうけれども、それでもまんまと乗せられてしまう。決して傑作といえる出来ではないが、愛さずにはいられない映画だ。
|