週刊シネママガジン作品紹介B級映画ラボきかんしゃトーマス
きかんしゃトーマス

 クリスマスが近づいてきたので、たまには子供映画もいいだろうと思って、「きかんしゃトーマス」を取り上げてみました。
 もともとはイギリスの有名なおもちゃ劇。最初期はリンゴ・スターがナレーターをやっていたということらしいけど僕は未確認。でも「きかんしゃトーマス」といえば誰でも知っているお話だ。僕も小さいころに朝の番組で見た記憶がある。機関車がしゃべるというのは子供心に凄いと思ったけれども、内容が幼稚すぎて、すぐに飽きた記憶がある。男の子の遺伝子ってものは、機関車には敏感に反応するもの。僕はこの年になってもいまだに機関車の車輪が動くメカニズムを見ているだけでもゾクゾクしたりするのだが、「きかんしゃトーマス」はそんなマニアック路線に行く前のまだ幼稚園児向けの内容だからして、機関車のメカニズムの奥深さが何も描かれていないのは残念。そこが子供心に許せなかったのかもしれない。しかも特撮がせこい。顔の表情がカットごとに付け替えていることは、子供にでもわかるだろう。しゃべっているのに口が動いてないし。幼稚園児向けの映画だからして、そんな細かいところにイチャモンつけても何も始まらないのだが。
 面白いと思ったのは、実写の俳優とミニチュアが同じシーンの中に登場していることだ。せっかくの映画作品だから、人間ドラマとして肉付けしたかったのかもしれない。出演者もハリウッドの名のあるスターたちを抜擢している。ピーター・フォンダも出ているが、一番がんばってるのは車掌役を演じているアレック・ボールドウィンだ。ほとんどのシーンは彼の一人芝居に支えられている。独り言を喋り、一人で走ったり転んだり。子供達のために陽気にがんばっていて、アレックの新しい一面を見たという感じだ。
 もう一人、素敵な出演者がマーラ・ウィルソン。どこかで見た顔かと思ったら「34丁目の奇跡」の子役がこんなところに出ていた。あの少女も今ではだいぶ大きくなった。引退せずにちゃんと映画に出ていたことは嬉しい。彼女は歯並びが悪いところが可愛いので、もはや悪女役は不可能。今後もこういう純粋な役ばかり演じていく可能性が高い。
 日本語版では、もちろんナレーターは森本レオ。この人にしかできないナレーションの至芸に感動!
 それにしても、トーマスの世界と現実の世界をつなぐ魔法の粉の名前が読んで字の如く「魔法の粉」だったのが笑える。そこまで易しくしなくてもいいのに。ちょっと大人には退屈な内容だが、しかし改めて人間は大人になるとどうしてこういう話の良さがわからなくなるのだろうかと、本気で悩んでしまった。
 

製作年:2000年・アメリカ
原題:Thomas And The Magic Railroad
監督:ブリット・オールクロフト
出演:アレック・ボールドウィン、ピーター・フォンダ、マーラ・ウィルソン
上映時間:84分
「きかんしゃトーマス」DVD

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2005年12月19日