ディズニーの短編映画は、ひょっとすると長編よりも面白い。これは「ファンタジア/2000」の初回発売DVDの特典で収録されていた短編映画だが、拾いものの傑作である。芸術市場カンヌで最優秀短編映画賞を受賞した同作は、そのスタイリッシュなペインティング技法と、他人に話したくなるようなウンチクで、ディズニーの短編アニメの中でも、かなり評価が高い。
 作画のタッチは、簡略化された背景と、切り絵のように平面的なキャラクターが、まるで新聞の風刺漫画のようなオシャレを演出している。ミッキーやドナルドの絵が食傷気味だった人にとっては、この絵のタッチは、目新しく感じるかもしれない。
 描かれていることは、世の中の楽器という楽器は、金管楽器、木管楽器、弦楽器、打楽器のどれかに分類されるということだ。この4種類の楽器がどのようにして生まれたのか、そのルーツと変遷を、原始時代から、現代の形に至るまで、スピーディに見せていくという内容だが、とにかくこのスピード感が見事である。たった8分の短編で、これだけの情報量を、ユーモラスに描きあげた演出力。とくに弦楽器のエピソードがうまく、弦楽器が最初の弓の形から、れっきとした楽器の形になるまでには、さまざまな試行錯誤が繰り返されたのだが、その過程を、楽しいコーラスに乗せて、ものの15秒で連続的に描いてみせている。この演出法は、今で言うCGのモーフィング技術を先取りしている。アニメに不可欠なものはメタモルフォーゼ(変態)だと豪語していた手塚治虫先生が、どうしてそこまでディズニー映画を愛していたのか、これを見れば納得もできよう。手塚先生の短編映画の作画のスタイルも、これに多分に影響されているように思われる。
 人に「へえ、そうなんだ」と思わせなければ、ウンチクとしては失敗だが、その点、「プカドン交響楽」で描かれているウンチクは面白くてためになる。とくにブラスとサックスの音の出し方の違いがよくわかっていない人は、これを見て「なるほど」と思うこと請け合いだ。

 

プカドン交響楽
原題:Toot, Whistle, Plunk and Boom (パラッパとピーヒョロとポロリンとドドン)
製作年:1955年
製作国:アメリカ
製作:ウォルト・ディズニー
監督:C・オーガスト・ニコルズ、ウォード・キンボール
上映時間:8分

ディズニーの傑作短編アニメーション
「蒸気船ウィリー」
「森の朝」
「三匹の子豚」
2003年10月19日