1秒間に24回という地道な撮影法によるストップモーション・アニメは、「キング・コング」のオブライエン時代にさかのぼり、特撮映画の魔術師ハリーハウゼンを経て、90年代に入ってからCGの台頭で、すっかりメジャーから衰退してしまった。ストップモーションだと動きがカクカクしてしまい、実写の映像にとけ込ませるのが難しかったため、避けられたのである。
が、CG人気の裏で、密かにまったく新しいタイプのストップモーション・アニメが注目されていたのである。ちょうどそのころ、各国で「ピングー」やシュワンクマイエルのアニメなどが作られたが、それらよりも一足早く全米の批評家から注目されたイギリスのアードマン・アニメーションズは、メジャー産業に与えた影響が大きい。
アードマンの初期の代表作「快適な生活」は、動物園にいれられている動物たちにインタビューをする、ユーモラスな疑似ドキュメンタリー映画である。鳥・亀・白熊の生きた表情、粘土による肌と毛並みの質感、ツバをのみこむときののどぼとけの細かい動きなど、これまでのストップモーション・アニメの無機質ぽいイメージを払拭する出来栄えで、CG映画に浮かれているメジャー産業を大いにおびやかす存在となった。
アードマンはその成功を踏み台にして、急がず焦らず、アンダーグランド「チビのレックス」シリーズ、マルチスクリーン映画「どっちが豚?」、コミカル・スリラー「ペンギンに気をつけろ!」などの意欲作を地道に製作。毎回ユニークな仕掛けが見られ、常にクオリティの高い作品に仕上げている。
ドリームワークスは、アードマン・スタッフの才能を最初に買ったメジャー会社である。メジャー向けの長編アニメを製作するように任されたアードマンは、ハリウッドの体制の中にあえなく破れ、「チキンラン」が不完全燃焼の作品になったのが悔やまれる。
あいにく日本では、キャラクターだけが一人歩きして有名になってしまった。ローン会社、保険会社、食品会社のCFでおなじみだが、実際に映画を見たという人は少ない。
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