これはティム・バートンの作品では一番好きである。「映画の映画」としてもこれを超える傑作はあと10年待っても現れないだろう。とにかく温かい愛をもって鑑賞したい一本だ。
エド・ウッド(エドワード・D・ウッドJr.)とは、ご存じ、「史上最低の監督」という不名誉な称号を授かった50年代の監督である。50年代はハリウッド最盛期。数多くの名作が生まれ、星の数ほどのスターたちが誕生したあの栄光の時代である。この映画では、50年代をひたすらばく進した活動屋エド・ウッドの男のロマンを描いている。オーソン・ウェルズを敬愛してやまないエド・ウッドが、偶然カフェでウェルズと会うシーンなど、とても文章では言い表せない感動がある。ティム・バートンは当時の映画スタイルを踏襲し、黒白フィルムで格調高いBテイストを醸し出すことに成功している。
ジョニー・デップ。僕は彼ほど色々な役を演じてきた俳優を見たことがないが、彼にとってもこれはベスト・アクティングといえるだろう。往年のホラー・スター、ベラ・ルゴシを演じたマーチン・ランドーもうまい。彼の哀愁ある表情のお陰で、ルゴシが再評価されたのもよくわかる。
僕がじーんときたのは、エド・ウッドがどんなにへっぽこな映画を作ろうとも、本人は史上最高の名作を作った気でいること。自信過剰か、独りよがりか。なんにせよ、自分の意志を信じ抜いたことは素晴らしい。すぐ自己嫌悪に陥る僕とは大違いである。
エド・ウッドの映画はたしかにつまらない。しかし、僕はエド・ウッドの作品に点数をつけるとして、最低でも40点はつけよう。「Glen
or Glenda」、「Plan 9 From Outer Space」なんて、ネーミングもうまいではないか。僕にはこんなにラブリーなタイトルをつけられる才能はない。どんなにひどい映画でも、1本の作品として完成させたこと、そしてロードショーで上映したこと。これは尊敬に値する。僕にできない仕事ができる人の作品に0点をつけるなんて、僕にはとてもできない。
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