週刊シネママガジン作品紹介B級映画ラボドクター・モローの島

 島にひきこもって、獣を人間に変える薬を研究するマッドサイエンティスト・モロー博士の物語である。原作はH・G・ウェルズの同盟のSF怪奇小説で、ロン・チャニー主演の「獣人島」、マーロン・ブランド主演の「D.N.A.」ほか、何度か映画化されている。
 島の人間がもとは動物だったということを、ひた隠しにして、ミステリアスな雰囲気を醸し出そうとしているが、隠し方がわざとらしく、観客は前半ですでに気づいているのに、なおも、くどくどとヒントを少しずつ提示していくところが、うっとうしい。獣人たちの特殊メイクもオモチャみたいで、ひどく安っぽい。
 モロー役をあのバート・ランカスターがやっているが、彼のような偉大なスターが、よくもこのようなくだらない作品に出たものである。演技に覇気がなく、投げているように見えなくもない。

 ウェルズ原作の映画には駄作が多い。小説そのものは素晴らしいものばかりだが、映画化すると、決まってB級くさくなるジンクスがある。ジュール・ベルヌ原作の映画のほとんどが成功しているのに、ウェルズの映画はどうしてうまくできないのだろうか。描き方によっては素晴らしい芸術作品にもなったと思うのだが。
 まだ記憶に新しい「タイム・マシン」は、B級映画からの脱出を試みた作品とも見られる。それも結局は、見せ方が大がかりになっただけの失敗作で、B級くささは拭えなかった。「モロー博士の島」も「タイム・マシン」も、フリッツ・ラングのようなアート志向の監督が映像化すれば、幻想的な傑作になったであろうに、無名の監督だけしかウェルズの小説の映画化に興味を持たなかったのは残念な話である。

 

原題:The Island of Dr.Moreau
製作年:1977年
製作国:アメリカ
監督:ドン・テイラー
出演:バート・ランカスター、マイケル・ヨーク、リチャード・ベースハート
上映時間:99分

H・G・ウェルズ原作の映画
「透明人間」(33年/米)
「来るべき世界」(36年/英)
「タイム・マシン」(59年/米)