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ドキュメンタリーのくせして、かなり話題をさらっていった感のある作品だが、あけてみるとなんのこたぁない凡庸なドキュメンタリー映画だった。取り上げたテーマが、アメリカの銃問題についてとなれば、それだけでも価値があったのだろう。実際、アカデミー賞のドキュメンタリー部門で受賞した作品で、僕が面白いと思ったのはディズニーの動物映画とクストーの探検映画くらいなもので、大して面白い作品が揃ってない。アカデミーの委員会ってそんなもん? ドキュメンタリー自体があまり一般受けしないのも起因していると思う。アカデミー賞には60年以上も前からドキュメンタリー映画部門があるのに、ずっとB級的な位置付けだったし、2002年になって、この映画でようやく大衆に確認されたところである。
それは戦争のタイミングもあった。マイケル・ムーアが授賞式で、ありきたりな挨拶をしていれば、この映画は大して注目されることはなかっただろう。ムーアはブーイング覚悟で、ブッシュを批判して、自分の名前を売ることに成功した。「シカゴ」が作品賞を取ったことよりも、「千と千尋の神隠し」がアニメ部門を制したことよりも、ムーアの発言が一番のビッグニュースとなった。これが引き金になり、同作は記録映画として破格の売上を記録した。ちょっと狡(こす)いが、とにかくこれで、世間の目を開かせることはできた。こういう手もあるというわけだ。「映画館に来てまでドキュメンタリーは見たくない」というテレビっ子が、このドキュメンタリーに興味をもってくれたのは、大きな一歩である。それだけでもこの映画の価値は大きい。
アポ無しの突撃取材というのがこの映画のスリリングなところだろう。ムーアは何を言い出すかわからないキナ臭い奴だ。チャールトン・ヘストンにインタビューするべく、あいまいな言い回しで正門ゲートを突破する悪賢いやり方からしてハラハラものだが、いざインタビューが始まってからも、危険人物ムーアがこの偉大なるお方にどんな無礼をやらかすかしれず、鑑賞者に妙な汗をかかせる。
ムーアは原一男に触発されたと公言しているが、僕が思うに、ドキュメンタリー映画の分野は日本が一番発展しているようである。山形国際ドキュメンタリー映画祭は世界の映画作家が集まる記録映画の大きなマーケットだし、日本人にとっては、北米のドキュメンタリーがひどく陳腐にみえたりもする。僕はこの映画が陳腐に見えたけど、あなたはどうだろう?
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原題:Bowling
For Columbine
製作年:2002年
製作国:カナダ
監督:マイケル・ムーア
上映時間:120分
DVD
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アカデミー賞最優秀長編記録映画賞受賞作品
「空と泥」(61年/仏)
「愛のファミリー」(77年/米=日本)
「ハーヴェイ・ミルク」(84年/米)
作品で使われたビートルズ・ソング
「Happiness is a Warm Gun」
(幸福は温かい銃)
チャールズ・マンソンがシャロン・テートを殺す啓示だと言った「ホワイト・アルバム」の中に入っている一曲で、ドラッグの幸福感についてジョン・レノンが歌っている。ムーアさん、選曲の意味、よくわかってらっしゃる! |