森田芳光の脚本を、ズブの素人に演出させて新しい映像感覚を発掘しようという?オムニバス・シリーズの第二作目。
僕にとってはこの2作目だけが、自分の血であり肉であるかのように、それほど重要な位置にある映画になっている。この記事を書いている現在からかれこれ16年も前になる映画だが、僕はこれをテレビで中学生の時に見た。その当時の僕はテレビといえばクイズ番組とアニメとバラエティ以外に興味がなかった。「バカヤロー!2」を見たのはチャンネルをバチバチ回していてたまたま見ただけのことである。偶然からすごい映画と出会ったものだ。僕が見たのは第2話の途中からだったが、引き込まれて、第3話と第4話は最後までしっかりと見た。中学生だった僕の脳裏に物凄く鮮烈に記憶に残ったものだ。あの年齢にとってはやばいほどに現実的すぎる映画だった。
あれから何年も歳月が過ぎて、つい先週、僕はビデオ・オン・デマンドで久しぶりにこの思い出の1本を再見したが、第3話と第4話はかなり細かいところまではっきりと覚えていたことに自分自身が一番驚いた。ガタゴト音のする洗濯機も、山田邦子のハイヒールも、ラスト・シーンの風船もはっきりと覚えていた。
一番印象に残っていたのは第4話である。中学の頃、これを見たとき、僕が思ったのは、働くのはなんと大変なことだろうか、ということである。どこにいっても面接で落とされる山田邦子の姿は、僕にとってトラウマになった。あの姿は忘れもしない。いつまでも何年も何年も頭の中から離れなかった。だから今久しぶりに見たときも、まるで昨日見たかのようによく覚えていた。思えば、あの話のせいで僕は面接とは怖いものだというイメージを植え付けられた。大人になりたくないと思ったし、あの社会に入るのも怖くなった。僕が面接で常にあがってしまう<面接恐怖症>に陥ったのも、この映画のせいに違いない。
中学の頃は藤井フミヤと山田邦子しか知らなかったが、しかし今改めてみると、出演者の豪華ラインナップに驚く。俳優・芸人・歌手なんでも集まって、まさにオールスター共演。名のある有名人だけでも40人以上は出演しているだろう。このときからすでに爆笑問題が映画出演を果たしていたとは! 小林稔侍もみんなも若いこと!
この第1話は今回初めて見たが、4話の中では一番出来が良い。お父さんの仕事のよくありそうな風景である。どうってことのない話だが、普段の生活に近いものがあり、すごく共感を覚える。この誰にでもよくわかる日常風景の描写が「バカヤロー」のキモなのだろう。
第2話はコンビニの店員が常日頃思っているムカツクことを戯画化したもの。僕も昔レンタルビデオ店で働いていたので、この主人公の気持ちはよくわかる。どうしてもムカツクお客さんは常にどこにでもいるものである。しかしこの話はオチが大袈裟すぎだ。
第3話は今見てもうならせる作品。電化製品で新製品を買ってもすぐに古くなってしまうという、今も変わらぬ永遠のテーマ。この話では新機能として描かれている「S-VHS」も今となっては古い物になった。秋葉原の風景を見ても、今見ると時代を感じさせる。
巨匠たちは、くだらない映画をみて、よく「生活のディテールがない」と嘆くが、生活のディテールとは、この映画に描かれているようなものだと僕は思っている。
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