週刊シネママガジン作品紹介B級映画ラボバック・トゥ・ザ・フューチャーPart2

 以前、「名作一本」のコーナーで、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を取り上げたことがあったが、なぜ今更このページにきて「PART2」を紹介するのか。というのも、これは世にも珍しい品種の「続編」だからである。「バック・トゥ」は正編一本だけでも完結した面白い映画だった。正編と同じスタッフ・キャストで二つの続編が同時製作され、正編から4年のブランクがありながら、ちょうどもとから「バック・トゥ」が3作すでに出来上がっていたかのごとく、「2」「3」は見事に正編にドッキングしていたのだ。「ターミネーター」「スター・ウォーズ」などの続編は、ストーリー上はつながっているものの、雰囲気が明らかに第一作とは別物だったのと比較しても、「バック・トゥ」は正編と続編のブランクを感じさせない珍種である。とくに「2」は「1」と「3」あってなんぼのもんで、頭もケツも不完全燃焼。それ単体では効力を発揮しないはずだが、ボックスオフィスはぶっちぎりトップ爆走。「マトリックス・リローデッド」が登場するまで、この作品的位置づけは、なんとも稀でキテレツ、B級ロマンよここにあり、と叫びたくなる。
 「2」は、一言で評すなら「1」のパロディである。 自作を次作のネタにしてしまうとは、まこと大胆不敵。あったようでなかった荒技だ。シリーズものには「パターン」はつきものであるが、この続編はパターンなんてレベルじゃなく、パターンを超越したセルフパロディである。「1」とまったく同じ展開、同じシチュエーションを用意しつつも、「1」とは微妙にオチがずれており、その差異が笑いの肝になっている。気づかないところでも、登場人物たちのシュールな未来服が、「1」におけるオールドファッションのパロディになっている奥深さで、何度も噛むほどに美味しい。「天気予報なんて30年たっても当たらんよ」など、「1」で出た些細なセリフまで「2」の伏線に置く高等テクは、まるでこじつけがましくなく、偶然の助けを借りながらも、このやり方がまさかあそこまで的中するとは、いやはや、よくやってくれたもんだよな。
 

原題:Back To The Future Part II
製作年:1989年
製作国:アメリカ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン
上映時間:107分
DVD

とんでもない続編
「続・激突!」(73年/米)
前作「激突!」とは何一つも関連がない配給会社の商業戦略の不幸な落とし子
「オズ」(85年/米)
不朽の名作「オズの魔法使」から実に46年ものブランクを開けての自殺行為ともいえる無謀な挑戦
「ホーム・アローン2」(92年/米)
究極の「パターン」映画。「1」と「2」どっちが正編かわからず、逆転させて見ても何違和感ない怪作

2004年3月18日